世界のサッカークラブのブランド価値を評価する「ブランド・ファイナンス フットボール50 2025」レポートが発表され、サッカー界におけるブランドの経済的影響力が改めて浮き彫りになりました。この最新の報告書によると、世界のトップ50サッカークラブの合計ブランド価値は、2024年から5.5%増加し、219億ユーロに達しています。現代のサッカーにおいて、ブランド価値は単なる成功の指標に留まらず、クラブの競争力と持続可能性を支える重要な要素となっています。
世界のサッカークラブブランド価値ランキング:2025年の動向
2025年のランキングでは、レアル・マドリードが世界で最も価値のあるサッカークラブブランドの地位を維持しました。同クラブのブランド価値は前年比14%増の19億ユーロに達し、最強のクラブブランドおよび最高の企業価値も獲得しています。レアル・マドリードは、2024/25シーズンに主要なトロフィーを獲得できなかったにもかかわらず、そのブランド価値を向上させており、クラブの盤石なブランド管理とアディダスとの8年間のメガディールなどのスポンサーシップが、この地位を確固たるものにしています。
FCバルセロナは、ブランド価値が11%増加して17億ユーロとなり、マンチェスター・シティを抜いて2位に浮上しました。ラ・リーガ、コパ・デル・レイ、スーパーカップを獲得した成功したシーズンが、この上昇に大きく貢献しています。
一方、マンチェスター・シティは、2025年のランキングで3位に後退しました。ブランド価値は11%減の14億ユーロとなり、2020年から2024年までの5年間の継続的な成長に終止符を打つ形となりました。これは、主要なトロフィーを獲得できなかったことが影響していると見られます。
その他、リヴァプールFCはブランド価値が2%増の14億ユーロとなり、4位にランクインしました。これは、2024/25シーズンのプレミアリーグタイトル獲得が要因です。また、パリ・サンジェルマン(PSG)は、初のチャンピオンズリーグ優勝とブランド価値の13%増加により、14億ユーロに達し、トップ5に名を連ねました。PSGはFCバイエルン・ミュンヘンとマンチェスター・ユナイテッドを上回る結果となりました。
ブランド価値を左右する要因
サッカークラブのブランド価値は、ピッチ上での成績だけでなく、商業活動、ファンエンゲージメント、そしてグローバルなリーチといった多岐にわたる要素によって形成されます。ブランド・ファイナンスは、マーケティング投資、ステークホルダーのブランド・エクイティ、商業パフォーマンスに基づく一連の指標を用いてブランドの強さを測定しており、多くのクラブが「AAA+」という最高評価を獲得しています。
レアル・マドリードは、ブランド力指数(BSI)で100点中96.3点という高いスコアを記録し、AAA+のブランド評価を得ています。これは、同クラブがGoogle、コカ・コーラ、フェラーリ、ロレックスといった世界的なブランドをも凌駕する強さを持つことを示しています。
商業収入はブランドの強さと密接に関連しており、特にトップクラブにおいては、強力なブランドが収益増加に直結しています。スポンサーシップ契約、試合日の収入、メディア権利収入などがクラブの財務基盤を強化し、それがさらなるブランド価値向上へと繋がる好循環を生み出しています。
リーグ別のブランド価値分析
リーグ全体で見ると、イングランドのプレミアリーグが引き続き世界で最も価値のあるスポーツリーグとしての地位を確立しています。プレミアリーグのトップ10クラブのブランド価値の合計は82億ユーロに達し、世界のトップ50クラブの総ブランド価値の37%以上を占めています。これは、プレミアリーグが持つ広範なグローバルファンベースと、高い商業的魅力を反映しています。
一方、スペインのラ・リーガでは、レアル・マドリードとFCバルセロナの2強がブランド価値の大部分を占める傾向が顕著です。両クラブでラ・リーガ全クラブの合計ブランド価値52億ユーロの70%を占めており、他リーグと比較してもブランド価値の集中度が高いことが示されています。
ドイツのブンデスリーガやフランスのリーグ・アンも欧州の主要リーグとして健闘していますが、プレミアリーグやラ・リーガのような特定のクラブへのブランド価値の集中、あるいはリーグ全体の均等な価値分散といった異なる特徴が見られます。
アジアにおけるブランド価値:鹿島アントラーズの評価
「ブランド・ファイナンス フットボール50 2025」レポートでは、日本国内のクラブにも言及されています。鹿島アントラーズFCは、日本国内で最もブランド力の高いサッカークラブとして選出されました。独自のブランド力指数(BSI)において100点満点中63.5点を獲得し、「A+」のブランド力と評価されています。
この評価は、競技面での成果に加えて、戦略的なブランド構築やファンエンゲージメント、運営・管理面での取り組みが総合的に評価された結果です。特に、「クラブ運営の健全性」の分野で国内トップ、「熱狂的なファンを持つクラブ」でも国内3位にランクインするなど、データに基づいた運営体制と熱心なファン・サポーターの存在がブランド力向上に大きく貢献しているとされています。環境サステナビリティへの取り組みや、女性ファン層に特化した「Dear Ladies」プロジェクトといった社会貢献活動も高く評価されました。
まとめ
「ブランド・ファイナンス フットボール50 2025」レポートは、世界のサッカークラブにおけるブランド価値の重要性が増していることを明確に示しています。レアル・マドリードやFCバルセロナといった欧州のビッグクラブがその強固なブランド力で市場を牽引する一方で、プレミアリーグ全体がリーグとしての高いブランド価値を維持しています。
ブランド価値は、単にクラブの人気度を示すだけでなく、商業的成功、新たな投資の誘致、そして持続的な成長を実現するための基盤となります。ピッチ上での成績はもちろんのこと、戦略的なブランド管理、ファンとの強固な関係構築、そして社会貢献活動への積極的な取り組みが、現代のサッカークラブにとって不可欠な要素となっています。
日本においては、鹿島アントラーズがそのブランド力で国内トップの評価を得ており、アジアにおけるサッカーブランドの可能性を示唆しています。グローバルな競争が激化する中で、各クラブがどのようにブランドを構築し、その価値を最大化していくかが、今後の成長を左右する鍵となるでしょう。

 
  
  
  
  
